2009年8月11日火曜日

まち美学4

▼イタリアやギリシャの組積造の建築では、外壁(第一次輪郭線)が街並みを決定しているのに対し、香港・韓国・日本は建物の外壁の袖看板(第二次輪郭線)が街並みとなっている。日本人画家もパリを描くと絵になるが、日本の街並みは絵にならないという。「第一次輪郭線」は秩序と構造がはっきりして描きよいのに対して、「第二次輪郭線」は無秩序で構造化されていないため、絵にならないからであろう。第二次輪郭線をできるだけ少なくすることによって街並みを整えることが大事である。具体としては、①都心の主要道路を広くし、建築の第一次輪郭線を見やすくする。②歩道の幅を3メートル以上にすれば、建物の第一次輪郭線が視野に入りやすくなる。③第一次輪郭線を遮蔽する第二次輪郭線、特に袖看板を極力制限する。▼都市景観における魅力の一つに、見下ろす「俯瞰景」がある。モンマルトルの丘、横浜・神戸の「港の見える丘」は、見る人と街並みとを緊密に結びつけてくれる。特に函館山から望んだときの夜景は感銘できるが、あの俯角10度の円弧がちょうど函館の市街地と港の海面とをかかえこんで、まさに「眼下に広がる」というものである。都市の街並みにおいて、坂のある街、階段のある街、丘のある街、港の見える丘は、それぞれ心に焼きつく印象を人々に与えてくれる。できるだけ俯瞰景をふやすことである。しかも、景観として優れたものになるためには俯角10度である。▼小さな空間こそ。私はたった二畳ほどの小さな書斎を屋根裏にもっている。手をのばせば眼鏡も煙草も原稿用紙も本も、なんでも必要なものを簡単に取ることができる。この小さな部屋に入ると、不思議と気が落ち着いて仕事がはかどるのである。屋根裏部屋は、大体において天井が斜めで低く、小さな出窓がちょこんと開いている。最上階に位置するせいか、外界から遮断されていてなんともいえない安心感がある。ベッドに横たわりながら斜めの天井に貼ってある写真やモットーを眺めていると安らぎを覚えるのである。こんな「小さな空間」には、自分の城としてのプライバシーや庇護性があるのである。▼そこは、自分だけで考えたり行動できる「蛸壺の空間」である。小さな空間とは、自己をみつめることであり、そこから遥か遠くの大空を眺めながら、けし粒のように消えてゆく小鳥に身を託したりする。イマージュの世界では、小さくなることと遠くにゆくこととは同じなのである。一人になりたい、旅に出たい、見知らぬ遠い国に行きたい、と思うとき、人々はこの「小さな空間」を、求めている時に違いない。一人になりたいのでる。八月十一日(火)

0 件のコメント: