2009年8月11日火曜日

まち美学3

▼ヴェネチアの知り合いのイタリア人とその子供を連れて、サン・マルコ広場に出たことがある。子供たちは喜々として、あの舗装の模様沿いに鬼ごっこをしたりして、しばし遊んだ後、いよいよ寝る時間になって広場の脇の住まいに帰ると、子供たちは二階の方に向かって「ボナ・ノッテ」と大声で叫ぶ。一斉にそのあたりの窓という窓が開いて、沢山の顔がその子供たちに「おやすみ」の挨拶を交わすのである。街を住民の皆で静かにみはっているのが実感としてわかった。さしずめ日本なら京都の町家の近隣意識であろう。「おもて」で遊ぶ子供たちは格子ごしに母親の領域にある。また「おもて」で行われる日常の行事、掃除、植木の手入れ、水撒きをはじめ、祭事その他はここに育ってゆく子供たちの社会教育の場としても重要であった。▼碁盤目に配置された道路に沿って建物を配置すると、すべて「出隅み」空間となり、人々を押し出すような非情な都市空間となる。その逆に、「入り隅み」の空間では、人々を包み込むような温かいまとまりのある都市空間を生み出す。日本の場合、イタリアの広場のような「入り隅み」空間が苦手だが、できないことはない。建物のセットバック(前面後退)である。できれば反対側の建物も同様に後退させる。前面空地を広場(⇒六花亭)とできれば、街並みが整う。▼サンクン・ガーデン(低い庭)技法の先駆事例は、NYのロックフェラー・センター。この低い広場は冬はアイス・スケート場となり、その他の時期は野外レストランになり、大勢の街を歩いている人々はこのあたりにとどまり、下の広場の活動を手すりにもたれながら眺めるのである。街路に単に交通という機能以外に、とどまったり、話したり、眺めたり、食べたり、スポーツしたりする機能が与えられると、街が急に活気を取り戻すのである(⇒釧路のサンクン・ガーデン)。この技法は、敷地の一部を低くし閉鎖空間をつくることによって、屋外でありながら室内のようない「入り隅み」空間をつくることにある。▼コートハウスの提案。もし三十坪の敷地に延三十坪の総二階を建てれば、十五坪の屋外空間ができる。この建て方を西欧ではコートハウスと呼んでいる。この十五坪の庭のうち、三坪を道路と家との間に割りあて、街並みを美しくするために花や植物を植える。残りの十二坪の本庭には二坪のダイニング・テラス、六坪の雑木林、二坪のサウナ小屋、二坪の作業場にすることができる。日本ではこのような連続住宅を「長屋」と呼んだり、京都では「町家」と呼んでいるが、街並みの美化をするために前庭をとるところが少し異なる。また、もし一軒から一坪を供出すれば、五十件で五十坪の自家用公園か共同の駐車場をつくることもできる。八月十一日(火)

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