2009年6月20日土曜日
シカゴ学派の席巻1
『悪夢のサイクル・ネオリベラリズム循環』(内橋克人・文春文庫)から。▼100万ドル以上の資産をもつ日本の富裕層は年々増え続け、今日では141万人。世界の富裕層の16.2%(メリルリンチ調)。一方で、かつては中流の暮らしを楽しんでいた家族は中流から脱落し、ギリギリの生活をしている。▼ケインズ学派とシカゴ学派の争い。ケインズが唱えた公共政策とは、資本家や大企業がその優越的な力で市場をほしいままに利用することを政府が規制し、不況に対しては政府が財政投資と公共事業によって雇用を確保することでその悪影響を緩和し、累進課税を強化し社会福祉を充実することで、富者から貧者への富の再配分をおこなう、といったものです(⇒ルーズベルトのニューディール政策)。しかし、ケインジアンが困ったのは、失業率とインフレの関係でした。失業率を低下させようとすればインフレが発生し、インフレを抑制しようとすれば失業率が高くなるというトレードオフの関係でした。これを「フィリップス曲線と呼びます。この曲線によれば、インフレ率が上がれば、失業率が下がるはずなのに、70年代は必ずしもそうならず、失業率も上昇した。しかし、シカゴ学派のミルトン・フリードマンは違いました。インフレを退治するためには、貨幣の供給量を減らすしかないと考えました。公共事業や福祉事業による需要創出効果は無駄である、というこの考え方をマネタリズムとも呼びます。規制はいらない、フリーマーケットにしろ、という新自由主義(ネオリベラリズム)たちの主張であり、この新古典派経済学はレーガン政権の主軸になります。▼しかしこのネオリベラリズム・サイクル(新自由主義経済循環、佐野誠新潟大教授)では、ケインズのいう一定のサイクルでの需給調整が起こらず、一般的な意味での景気循環とはならない。つまり自由化によって、海外からの資金が集まりバブルが起きるのです。このバブルがくせもので、企業だけでなく自治体も国も借金をしまくるわけです。経済が膨張していますから借金をしてもすぐに返せると考え、財政規律がゆるみます。そしてバブルがはじけます。このとき、資本は一斉に海外に逃避し、国、自治体、銀行、企業は一挙に不良債権をかかえます。そしてリストラを始めるのです。このときに、さまざまな規制緩和などの「改革」がされます。そして国や自治体、その国の価値が、安く評価されるときをねらって、一気に海外資金がなだれこむ。この繰り返しが果てもなく続くということなのです。その過程では、弱小企業の淘汰、雇用の喪失、貧富の差の拡大、外資の進出などが起こり、人心は荒廃します。日本は、ネオリベラリズム・サイクルがちょうど一巡しようとしているところなのです。六月二十日(土)
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