2009年1月6日火曜日

宇宙はどこから

『宇宙論入門』(佐藤勝彦・岩波新書)から。▼宇宙がうまれたときには、この世界にはある一つの力しかなかった。まず重力という力が生まれた。さらに温度が下がり、大統一理論に対応する力が生まれ、そこから強い力が分岐した。またしばらく経つと弱い力と電磁力とが分岐した。こうして現在われわれの宇宙を支配している四つの力が生まれてきた。▼私は大統一理論が予言する、宇宙の温度10の28乗度で起こる相転移が第一次相転移ならば、どのように宇宙の進化が変わるかを調べた。まず、相転移が遅れる効果により宇宙は過冷却を起こす。しかし、相転移が起こらないための真空のエネルギーは高いままである。真空が相転移を起こす前の宇宙の状態は、現在の真空よりエネルギーが高い。このエネルギーの差を「真空のエネルギー」と呼ぶ。真空のエネルギーは、アインシュタイン方程式の宇宙項と同じように、空間を押し広げる斥力のはたらきをする。宇宙の初期には、この真空のエネルギーの巨大な斥力が生じ、指数関数的な膨張が起こったのである。いわば倍々ゲームの膨張である。宇宙が素粒子のような小さな大きさから始まったとしよう。水素原子の中心にある陽子の半径は10のマイナス15乗メートルである。宇宙が最初この陽子の大きさだったとして、倍々ゲームを100回繰り返すとこの宇宙は太陽系を超え、140回繰り返すと現在見えている宇宙の大きさを超える。▼この急激な加速膨張はいつまでも続くものではない。真空の相移転の終了とともに、何百桁と増大した真空のエネルギーは潜熱として開放され、ふつうのエネルギーとなる。これは水蒸気が水になるとき、また水が氷になるときと同様である。このエネルギーによって、いろいろな素粒子(クォーク、レプトン、光子など)が生まれ、宇宙は過冷却の状態から一挙に火の玉宇宙が生まれる。ビックバン宇宙の誕生である。▼われわれの太陽は、あと50億年もすれば、大きな赤色巨星になって、地球も呑み込んでしまうであろう。いや、その前に、「知的生命体の社会は、高度な文明を獲得したときに100年程度で不安定になり自滅する」とイタリア生まれの原子核物理学者フェルミはいう。▼となると、今世紀が人類の「Our Final Century」 ということですね。一月六日(火)

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