2008年8月28日木曜日
フロイトの苦手な〈母娘関係〉
『シズコさん』(佐野洋子・新潮社)から。▼叔母には社会という認識がないのだ。世間どまりで、何より家族を愛していた。そしてそこには、悪意などひとかけらもないのだった。▼母は愚痴をこぼしたし、人の悪口も云ったが、しょぼくれた母を見たことはない。体が頑強であったように、精神もタフで荒っぽかった。子供の話をしみじみ聞くことはなかったから、子供は母と話をしなくなった。しかし他人の話はしみじみ聞いたからこそ、人にも好かれたし、便りにもされていた。家族とは非情な集団である。他人を家族のように知りすぎたら、友人も知人も消滅するだろう。▼ああ、世の中にないものはない。ごくふつうの人が少しずつ狂人なのだ。少しずつ狂人の人が、ふつうなのだ。八月二十八日(木)
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