2008年8月26日火曜日

土器は足し算

『情報の歴史を読む』(松岡正剛・NTT出版)から。▼なぜ、日本は土器文化に執着したのか。これは謎です。石器は「削る文化」です。石をどんどん削って道具にする。鋭く強い道具ができますが、いったん壊れるとつかえません。これにたいして土器は土を盛りあげ、ふくらます。加除修正も自由です。たしか木村重信さんだったと思いますが、「石器は引き算型、土器は足し算型」といっていたかと思います。このような土器を日本人は一万年にわたって愛用した。いや、縄文以降も愛用し、さらに茶の湯の文化というまったく独自な文化を確立して以降のいまもなお、日常生活でも、芸術生活においても、われわれは「やきもの」に執着し、その「用の美」を尊んでいる。▼世界では「やきもの」よりも銀器や金属器やガラス食器を愛用している国々のほうが多いのです。韓国料理を食べにいくと、ロースやカルビがのっているお皿も冷麺が入っているボールも箸もスプーンもみんな金物ですね。日本では金属器でごはんを食べる人はめったにいない。それでも日本も明治時代になると、福沢諭吉がなんとかして洋食器の導入をはかるんですが、そしてわれわれも洋食器に慣れてしまってもいるのですが、けれどもどこか心の底では「やきもの」派なのです。▼土の器、それに木の器を加えたい。八月二十六日(火)

0 件のコメント: