2009年10月11日日曜日

第三のイタリア

『創造都市への挑戦』(佐々木雅幸・岩波書店)から。▼産業空洞化に苦しむ日本を地域から立て直すモデルとして、イタリアの中小企業が注目されている。なかでもボローニャを中心に、フィレンツェ、ヴェネチアという三つの都市を含む中部イタリアである。従来、イタリアの経済発展はミラノ、トリノ、ジェノバの三角地帯を中心とする北部イタリアの大企業が優勢な地帯と、パーリ、ターラントなど石油コンビナートなどの工業誘致を経験した南部イタリアの工場地帯であった。だが、1970年代の二度のオイルショック以降、イタリア半島の中部に位置し、中小零細企業の集積したトスカーナ州、エミリア・ロマーニャ州、ベネト州、マルケ州を中心とする「第三のイタリア」と呼ばれる地域の経済発展が注目されている。たとえば、ヴェネチアに近いトレヴィーゾにはベネトン三兄弟により、婦人服や子供服の分野で急激に成長したベネトンがあり、フィレンツェ周辺にはプラートという織物の世界的な産業地区があり、また、ボローニャ周辺には機械工業が集積し、スポーツカーのフェラーリの部品を製造する中小企業群や、ドゥカーティというレース用のオートバイメーカーや、各種のパッケージング機械メーカーなどがあり、大量生産ではなくて特徴のある高品質の製品を生み出している。グローバル競争の中で生き抜いている。▼ボローニャの街づくりについては、井上ひさしの『ボローニャ紀行』が、職人と大学とポルティコの街として伝えている。さすが文筆家です。すっきり巧みに描くものです。十月十一日(日)

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