2008年11月3日月曜日
壊れるアフリカ
『アフリカ・レポート』(松本仁一・岩波新書)から。▼指導者は、「敵」をつくり出すことで自分への不満をすりかえる。アフリカでよくみかける構図だ。ルワンダの大虐殺もジンバブエの経済崩壊も、そうして起きた。ルワンダはフツ族85%、ツチ族15%。で、1973年にフツ族の国防大臣がクーデターで政権を握ると、絶対多数を背景に独裁を続ける。90年代に入り政府有力者の腐敗に不満が高まる。それに対し政権側はラジオなどで「悪いのはわれわれではない、ツチだ」とする宣伝を開始。大統領の飛行機が何者かに撃墜されると、宣伝にあおられた部族憎悪が一気に噴き出し、大虐殺につながった。ジンバブエでも「1300万人の国民は苦しい生活を続けているが、見てみろ、人口の1%にも満たない白人が全農地の20%を所有し、あんな裕福な生活を楽しんでいる。お前たちが苦しいのは政府のせいじゃない、あいつらのせいだ」と宣伝・扇動した。ムカベ政権は、白人農場を接取したが、その農場から大量の失業者を生み出し、経済は崩壊した。▼アフリカは多部族国家がほとんどだ。選挙は出身部族の人口比で決まってしまう。国益より部族益が優先される。ジンバブエのムガベ大統領は人口8割を占めるショナ族の出身だ。ショナ族に有利な政策をとっていれば選挙に敗れることもない。政権は長期化し、腐敗する。国づくりは放置され、指導者が私物化した巨額の公金は海外の銀行に蓄財され、国内の市場に出回らない。蓄財した金が社会資本として回転しないため、経済の進展もない。さらに利権を握るグループと、排除されたグループとの対立が激化する。2007年末のケニアの大統領選挙では、それが部族間憎悪となり、殺し合いにまで発展した。▼現代アフリカの最大の問題は、先進国の無関心や、当事者国の累積債務などではない。「公の欠如」なのだ。それが部族対立、民族対立を生み出している。水や電力、警官や教師の確保といった公共政策に向かわない、このことが問題なのだ。▼中国には2億人の余剰労働者があふれ、国外脱出をうかがっている。しかも、入り込む余地のない先進国でなく、政府が自国の経済を保護しようとしていないアフリカに向かって流れ込んでいる。それにアフリカの中国人は商売がうまい。黒人商人は、売れ筋をつかんだ場合でも、在庫が切れるまで注文しない。次の商品が届くまで時間があき、売れ筋が変わってしまう。決定的なのは、商品を安く仕入れるルートをもっていないことだ。中国本土の生産現場と直結する中国人卸商とは、はじめから大きな違いがある。卸売りの分野では、中国商人の天下は続くだろう。▼アフリカの指導者たちは、勤勉な勤労者を育てるよりも、利権目当てで外国企業の進出を優先させた。中国商人も入り込んできた。国家指導者がうまい汁を吸っている間に、アフリカの富は国民に行きわたることなく、他者に奪われていく。▼壊れていくアフリカであるが、光るものもある。ジンバブエの農業NGO「ORAP」である。農業の事業資金は政府に頼らず、自分たちで稼ぎ出し、生産と販路を決定していく。その事業方式は隣国にも影響を与え始めた。十一月三日(月)
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